早春の朝

三月も上旬を過ぎたが、

まだ、早春と言っていい寒さの残る休日の朝。

その日仕事に出かける妻は、

家の掃除やら、朝食やら、息子の車を届けることやら、

あれこれ言い捨てて出かけた。

息子に車を届けて家に帰ると、

食卓には、カップヌードルが一つだけ、

ポンと置いてあった。

食パンを食べてしまったからお茶漬け探して、

食べといて、と言っていたのを思い出す。

仏壇へ朝の線香をあげに来た母から、

鯵の南蛮漬けと白菜の漬物をいただいて、

朝食にした。

普通に大きな会社に勤めていれば、

もう定年の年を迎えたが、

まだまだ仕事をせねばならない。

娘の大学通学にかかる諸費用、

それに全く無い蓄えの為に。

フーッとため息一つついて、静かに朝の曇りガラスを見やる。